100万回生きたねこに捧げる13の短編集『100万分の1回のねこ』

100万分の1回のねこ

こんにちは、SAKIです。

引きこもり続行中のため、今日も読んだ本のレビューを書いています。

今回は『100万分の1回のねこ』という本です。

タイトルからピンときた人も多いかと思いますが、そう、この本は、絵本『100万回生きたねこ』への、13人の作家によるトリビュート短篇集なんです。

読書するカエル

大人が泣ける絵本『100万回生きたねこ』

みなさんは『100万回生きたねこ』(著者:佐野洋子)という絵本はご存知ですか?

100万回死んで、100万回生きた「とらねこ」のお話です(あらすじはここでは詳しく書きませんが)。

1977年に発売されて以来、220万部以上も売れ続けているロングセラー本なので、もう読んだよ、という方も少なくないと思います。もしまだ読んでない方がいたら、ぜひ読んでみることをオススメします(あなたがいくつであっても!)。

数年前、私が初めて『100万回生きたねこ』を手にとった時は、絵本だし、薄いし、子供向けだろうと思って読み始めました。

でも、それはちょっと違いました。

100万回という時間を経て描かれる「生と死」や「愛」の形は、世代や年齢に関係なく、私たちが遠い過去から引き継いできた魂に向けて響いてくるような感じがしました。

だからこそ、読後にグッとくるものはあるものの、その内容は奥深すぎて、私にはそれが何故なのか言葉では言い表すことのできないものでした。

Amazonのレビューをチェックすると、読むたびになぜだか毎回涙が出てくるという方が多いのも特徴。そういった方たちのレビューを読むと、それぞれの感性があり、それぞれの解釈があるのだなぁと感じます。

私も初読から数年たって読み返した時、以前とは違った感情が湧き上がってきました。前回はなんとも言い表しようのないモヤモヤしたものでしたが、今ではそれが少しずつクリアに見えてきました。

それを実際に言葉に表して書こうとすると、なんだか薄っぺらくなるような気がするので書きたくないのですが(あるいは心の中が見透かされてしまうのが怖いのか…)。

ただ、ひとつだけ言えるとすれば、私はまだまだ「100万回」には程遠い回数しか生まれ変わってないのだなぁということ。きっとこれから何度も死んで、何度も生まれ変わることでしか、あのとらねこの境地に近づくチャンスは訪れないでしょう。

ねこと人間を巡るショートストーリーズ

ねこ

さて、今回新しく読み終わった本『100万分の1回のねこ』は、絵本形式ではなく、トリビュート短編集です。

江國香織さんや谷川俊太郎さんをはじめとする13人の著名作家や挿絵画家が、『100万回生きたねこ』の著者である佐野洋子さんと絵本に対して、敬意を込めて書き上げたものがそれぞれ収められています。

CONTENTS
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■江國香織「生きる気まんまんだった女の子の話」
■岩瀬成子「竹」
■くどうなおこ「インタビューあんたねこ」
■井上荒野「ある古本屋の妻の話」
■角田光代「おかあさんのところにやってきた猫」
■町田康「百万円もらった男」
■今江祥智「三月十三日の夜」
■唯野未歩子「あにいもうと」
■山田詠美「100万回殺したいハニー、スウィート ダーリン」
■綿矢りさ「黒ねこ」
■川上弘美「幕間」
■広瀬弦「博士とねこ」
■谷川俊太郎「虎白カップル譚」
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SAKI
上記の最後のお二人は、絵本『100万回生きたねこ』の著者である佐野洋子さんの息子(広瀬弦さん)と元ご主人(谷川俊太郎さん)です。

人間目線の作品もあれば、猫目線の作品もあり、それぞれの作家の個性によって描かれた人間(猫)模様が楽しめるのが本書のいいところ。ひとつひとつが短編なのも読みやすくていい。

なかでも、私が特に気に入ったのが「おかあさんのところにやってきた猫」です。

主人公の飼い猫「おちびちゃん」と、文字通り猫っ可愛がりする人間の飼い主「おかあさん」との関係性が、猫の目線から興味深く描かれています。

おちびちゃんは最初は飼い主とお家の中しか知りませんでした。いつの間にか窓から見える外の世界に惹きつけられ、ある日好機が巡ってきて飛び出していく。そこから、おちびちゃんの大冒険が始まるわけですが、心配でたまらない飼い主の気持ちなんて意にも介さない。

そして月日が経ち、長い冒険にも疲れて、おかあさんのことを懐かしく思うようになった猫は帰る決心をします。きっと再会を喜んでくれるに違いないと思って帰ったのに、何かがおかしい。予想外の展開におちびちゃんは唖然とすることになります(続きは本書で)。

このお話を書いた角田光代さんは愛猫家として知られていて、そんな作者だからこそ描ける飼い主の感情、猫の感情がとても現実味を帯びています。

SAKI
私は猫を飼ったことがないのですが、「窓の外をじっと眺める猫」や「隙あらばドアの外へ出ようとする猫」、「いなくなったと思っていたら3年後に戻ってきた猫」など、猫の行動にまつわるエトセトラが、このお話を読むとすっと腑に落ちる気がしました。

他の短編も読み応えあり。筆力のある作家さんの作品ばかりが集められているのがすごい。

おわりに

ねこ

今回ご紹介した『100万分の1回のねこ』を読む時は、ぜひその前に絵本『100万回生きたねこ』を読んでみることをおすすめします(逆もOK)。

そうすれば、本書をさらに深く楽しむことができると思います。

少なくとも私はそうでした。

先にも書きましたが、『100万回生きたねこ』を読んで感じた、あの感情はなかなか言葉にはうまく翻訳できなくて、もどかしい気持ちでした。

SAKI
人は言葉に表現することではじめて理解を深めることができる、と誰かが言ってました。

私の場合、13の作品の中から自分の感性に共感できる言葉を拾いながら、それらを紡いでいくことで、自分が感じた印象を整理できて、解釈も明瞭になっていく気がしました。

とは言っても、絵本関係なく読んでも面白い本です。特に猫好きな方や、実際に猫を飼っている方などは興味深く読めるのではないでしょうか。

それでは今日はこの辺で。

最後までおつきあいいただきありがとうございました。

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